マンション大規模修繕の現状|塗装業界ニュース20110928

マンション大規模修繕の市場が活況を呈している。バブル期に林立されたマンションが2回目の修繕時期を迎え、平成7年頃からのマンション取得ブーム物件の1回目の修繕がスタート、重複進行しているためだ。この需要増にあやかって塗料材料へのプラス要因を期待したいがそう単純には進まない。激しい受注競争による材料代へのしわ寄せ、現状スペックに満足している需要者意識が付加価値化への進展を阻む。マンション大規模修繕の現状を取材した。

矢野経済研究所の調べによると、マンション共用部修繕工事の市場規模は平成9年で5,764億円と予想。その内訳を見ると、外壁塗装、鉄部塗装、防水工事が約3,500億円を占めており、塗料・塗装業界にとっても大規模修繕の需要動向は影響が大きい。
ある市場関係者によると、ストック数と修繕サイクルから勘案すれば現状でも1兆円規模の市場を形成するという。フローからストックへ移行する中で建設市場規模の維持・拡大がテーマの国交省にとってもこの辺が課題で、「長期修繕計画標準様式」「長期修繕計画作成ガイドライン」を策定(2008年)、国土交通大臣認可の保険法人による「マンション大規模修繕かし保険制度」のスタート(2009年)など、マンションストック政策を推進。
そして今年度は、昨年から始めた「既存住宅流通活性化等事業」においてマンション大規模修繕工事を適用する計画で、需要を後押しするための助成金制度も設けられる。

塗料材料は厳しい需要環境
全国のマンションストック戸数は平成21年末時点で約562万戸、約1,400万人が居住する重要な住宅ストックだ。このうち、築後10年を超えたものが66.6%、20年超は35.5%、昭和56年の新耐震基準制定前の物件も20%ほど含まれている。経年マンションの老朽化対策から近年の超高層マンション対応まで大規模修繕工事に対するニーズも多様化、高度化している。
現在、外壁塗り替えの主流は、既存壁面の洗浄、補修後に微弾性フィラー+アクリルシリコン系のトップコート2回塗りというのが定番のスペック。

上塗りのウレタン系からシリコン系へという変化はあったものの、微弾性フィラー+トップコートという仕様はここ10数年来変化がない。住人が住みながらの工事となるため環境面から水性塗料は必須条件だ。
一方、屋上防水についてはウレタン系塗膜防水が主流になっている。日本防水材料連合会の統計によると、アスファルト防水、シート防水を含めた建築防水材の中で、ウレタン塗膜防水材が1769万と2010年度の販売実績でトップとなった。ここでも環境対応がテーマで、外部使用品ではあるものの生活の場に近い準外部との認識から水系化が進展、規制外だがF☆☆☆☆を取得するなど環境PRに努めている。
防水材料に関しては今後施工対象が広がっていく可能性がある。各住戸のバルコニーだ。新設時は軽防水で処理されているケースが多く漏水の危険性が高い。このため大規模修繕に合わせてきちんとした防水を行いたいとのニーズも高く、マンションの高層化に伴ってその対象面積は増える。

それとは対照的に外壁の塗料材料は需要増があまり期待できない。磁器タイル仕上げのマンションが急増してきており塗料の対象から外れていくためだ。糸口のひとつとしてタイルの剥落防止を目的とした塗膜カバー工法があるが、そもそもノーメンテナンスを期待しているタイルを塗装でカバーするとの認識を広めることが難しく、またタイルの風合いを損ねることを嫌う層もあり、需要は限られそうだ。
塗料メーカーは付加価値化を狙ってフッ素や無機系など上塗りの高スペック化を用意するが「現在のアクリルシリコン系でも塗料性能は以前に比べ格段に上がっており、加えて耐汚染性能も向上。現状の修繕スパンの中では概ね満足するレベル」(改修設計)と付加価値化への道も険しそうだ。

それよりも、「施工サイドの受注競争による材料代へのしわ寄せが厳しくなるばかりで、相当数のシェアを持たない限り採算割れしてしまう」(メーカー担当者)と敬遠する方向もあり、事実上プレイヤーが絞られてきているかたちだ。

問われる設計、施工品質
新築のドラスティックな減少は大手ゼネコン、地場の中小ゼネコンなど施工会社の参入ばかりでなく、監理設計、いわゆる改修コンサルタントの増加も招いており、設計、施工の双方でダンピングが繰り広げられている。
そこで課題となっているのが良質な施工品質の確保だ。どの管理組合も潤沢な積立金があるわけでなく、どうしても価格優先になりがち。新築とは全く異なったスキルやノウハウが必要なものの、マンション改修の経験が浅い設計や施工会社の参入、ダンピングで質の劣化が懸念されている。

工事品質の担保では、昨年から国土交通大臣認可の保険法人による、マンション大規模修繕かし保険がスタート。現状、保険の利用割合は「施行後間がないことから認知度が低く、全体の3~4%ではないか」(保険法人担当者)と、認知度の向上と、より使いやすい保険商品としてのブラッシュアップが望まれている。
一方、元請けを志向する専門工事業者の団体・マンション計画修繕施工協会(MKS)は国に向けてひとつの提言を行っている。建設業法における改修業の確立だ。新築を対象に規定されている現状の28業種ではこれからのストック時代にそぐわないとし、専門のスキルやノウハウが必要な改修業を加えるようにとの働きかけ。国も本格的な検討に入っている模様で、昨年から始まった公的かし保険制度も含め、工事品質の担保に向けた動きが始まっている。

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